精華小学校 岡田篤先生(小学校の箱根火山の授業では右に出る人はいない!)からのご意見
赤字はとくに重視した部分 紫は鷲山の感想と考察
鷲山先生
先日はお疲れ様でした。天候に恵まれ思い出となる一日でした。
さて、箱根火山のビデオについて、前回に引き続き、私なりのストーリーを描いてみました。
今回は意見と言うより、代案を示します。
まず、旧説を否定しきれない人たちを、撃破するぐらいのインパクトがないと、
ビデオにもインパクトがでないと思います。相原先生、奥様を説得する材料を揃えることです。
その材料こそ、前作の4つの証拠と同じです。
その証拠をまず揃えましょう。
ア 長尾峠の逆地層という矛盾。
イ 1つの巨大成層火山があったなら、同じ年代や種類の地層、岩石が、遠く離れた対角線側の外輪山にもあるはずだが、
この年代、岩石が違っているという矛盾。
ウ 巨大成層火山からカルデラになる際に、陥没があったが、陥没した岩石が残っていないという矛盾。
エ 外輪山は、巨大成層火山の名残なら、外輪山の1つ1つの小さな火山には、独自の成層構造を持たないはずだが、
多くは独自の成層構造を持つという矛盾。
これらアイウの矛盾を説明するために、岩石年代測定法という最新の科学技術を導入した。
その結果、(アイウに対応して)
ア 長尾峠の地層ははじめから、今と同じ方向の地層を持っていた。
イ 外輪山の地層は、全て場所によって違った年代を示した。
ウ ボーリング調査をすると、すぐ基盤岩にぶつかり、陥没岩石、及び陥没(したなら)年代の地層が出てこない。
エ それぞれの成層火山は、それぞれ独自の年代を持っている。すなわち、それぞれ独自の火口から噴出した溶岩、年代である。
以上の事実から、多数の火山が存在していた=巨大成層火山論が消滅。
これらが話の中心(ボディ)になります。
ここにもっていくためのイントロが必要です。
イントロ
・箱根全景、外輪山を強調する
・成層火山とは何かをしっかり説明する
成層火山が何かがわからないと始まらない話です。よって、他の火山タイプは説明しない方がいいぐらいです。
・旧説をしっかりあえて説明する
そして、ここまで一応の理解を与える。
(鷲山)これを第一部に分割編集します。
しかし、旧説に疑問を呈した人がいた。
ボディ
・上記ア→エ 矛盾と解決論=新説
山下さんたちの説明含む。
(鷲山)これを第三部に分割編集します。
結論(コンクルージョンとして)
・カラーのポスター地質図の登場。
・旧地質図との比較
・年代測定装置の技術紹介
実は、このストーリーは、平成19年に山下さんを独自取材したときに
話してくれたものです。
このストーリーが、私が授業で使っているテキストになっています。
テキストは、ウエブでご覧下さい。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~OKA/hakonenew.pdf
子どもたちは、旧説から新説への矛盾と解決、科学者の追究に興味を持ちます。
そして、科学が変わることを知ります。それは、教育的価値がある部分かと思います。
また、新説にも「4(以上)つの証拠」があるわけです。
なければ、説になりません。ただ、丹沢よりわかりにくいというところが難点です。
もし、この難点を克服できれば、新説は広まると思います。
参考になれば幸いです。
引き続き、お手数おかけします。
よろしくお願い申し上げます。
鷲山の考察
「丹沢の化石サンゴ礁」でも岡田先生のご助言は番組の筋と骨格をつくる上で役立っています。
箱根の地形を押さえ、形成史については、具体的な根拠を示すコンテンツ作りは課題です。
とりあえず長尾峠の露頭から、複数の分散した火口の誕生をイメージできる工夫を考えます。
澤野先生からのご意見
さて、先生の「箱根!神奈川の巨大火山」を拝見しました。岡田さんの超アカデミックな内容とは比べるべくもないのですが、一般視聴者的な意見としてお読みください。
まず、一言で言って、面白い内容だと思いました。断片的な知識だった新箱根火山のイメージを、トータルに把握することができました。
特に、いくつかの火山の集まりであったという新説による山体の復元図には、「こんな姿だったのか」と感銘を受けました。
新説を支持する目に見える証拠は、あまりないと聞いていました。ですから、火口の数を巡って新説の正当性を説明しているのは、とても良い切り口だと思います。
他にも、次のような点が素晴らしかったです。
1 箱根が身近な場所であるという導入。
2 火山のタイプを説明後、実際の映像と俯瞰図を対応させて、火山のタイプを確認する手法。(空撮シーンは、テロップだけの方が、画面に集中できます。)
3 県博で行われた箱根火山の立体模型「みんなでつくろう箱根火山」を時間系列で映像化した点。
(鷲山)ありがとうございます。よい部分を言っていただけるとうれしいです。子どもと同じですね。
岡田さんの感想に、「成層火山にもっと焦点をあてる」という指摘がありました。私としては、箱根火山は火山の博物館のような場所なので、溶岩ドームや溶岩岩尖などにもこだわるのは、わかる気がします。
しかし、内容がかなり高度です。理解するのは、中学生でもちょっと難しいかもしれません。補足説明が必要だと思います。中学の理科教師ならそれが可能でしょうが、小学校の教師だと、理科を専攻していないとちょっと難しいかと思いました。
(鷲山) この教材は、6年土地のつくりと変化の「火山による土地の変化」の究極版という位置づけと、中学校の理科で溶岩の粘性と火山地形をカバーする位置づけを考えています。中学校で地域教材として使っていただくことを意図して溶岩地形とマグマ粘性を入れています。
単純化するとわかりやすくなるので、岡田さんの指摘のように、成層火山に的を絞り込むべきかもしれません。
丁寧な導入が必要と思います。
先日、私の学校の職員室で、教員に富士山と箱根山のイメージ図を描かせてみました。
富士山は単純に△に描く人ががほとんどで、宝永火口もありません。
(鷲山)私も、職員室で、同じ調査を行ってみました。結果は同じでした。これは新第一部にかなり反映できます。
すでに新第一部に取り込んでいます。
箱根に至っては、カルデラを表現する人が皆無でした。
箱根の登山経験が豊富な人も、神山、駒ヶ岳、芦ノ湖、金時、明星、明神と美しい山並みを描いてくれました。しかし、カルデラのイマージがないのですね。
まずはカルデラとすそ野を広げる地形、箱根とは箱形をした岩山であるというあたりから入って、「そうなんだ!」としていかないと、
次の話がわからないわけですね。
新説に基づいた箱根火山の立体模型「みんなでつくろう箱根火山」は、複数の火山の集合体だという説の傍証になるのだと思いますが、その目的をもっと強調してもよいと思いました。
なぜ、この映像があるか、視る人に示すと言うことですね。
それから、些細なことですが、鷲山さんのナレーターと山下さんの説明の音量がアンバランスです。
具体的なご指摘ありがたいです。
対案のない批判で心苦しいのですが、せっかくの機会ですから、思ったことを書きました。
(鷲山) 感謝します。この対談をwebにアップすることをご許可ください。
それにしても、先生のこのパワーの源はなんなのでしょうか。すごいです。 私も自分なりにがんばれねば!と、思いました。ありがとうございます。
(鷲山)私にも自分の動機の根本はよくわかりませんが、自分に与えられた使命であるとは強く自覚しています。
澤野先生とも力をわせて、理科教育、とりわけ地学教育の改善を進めたいです。
地学教育の振興は、将来必ずこの神奈川を襲う地震と火山災害から多くの人命を救うと考えています。
鷲山
|